物件売却時に住宅ローンも購入者に引き継ぐ方法 ~ 後編

こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。

昨日から住宅ローンの引継ぎについてお伝えさせて頂いています。

所有していた物件を住宅ローンを完済せずに売却する場合、その住宅ローン残高を物件購入者に譲ることは基本的に出来ません。

これは通常の住宅ローン契約には「Due on sale(売却時が全額支払い期限となる)」という条項があるためです。

この「Due on sale」条項が住宅ローン契約にある場合、物件の売却成立と同時に現行の住宅ローンの全額返済が義務となりますから、その売却益の一部を住宅ローン返済に充てることになるのです。

アメリカ全土で概ね物件価格は毎年上昇、あるいは悪くとも横ばいの地域がほとんどですから、デトロイト市のように明らかに物件価値が下がり続けている都市は別として、大抵の場合は住宅売却時にその売却益からローン残高を一括返済することが出来ます。

ただし、

VAローン(現役・退役軍人用のローン)

FHAローン(政府主導のローン)

USDAローン(政府主導の農牧地在住の低所得者用のローン)

この3種類には「Due on sale」条項は記載されておらず、物件購入者へローンを引き継ぐことが可能となります。

物件売却益で住宅ローン残高を支払う場合は売主の手元に残るお金はかなり少なくなりますから、願わくば買主に住宅ローンを引き継いでもらった方がより得策といえます。

今日は住宅ローンを引き継ぐ場合の詳細について、深堀していきましょう。

住宅ローンを引き継ぐことの利点

売主からすれば、物件を売却する際に自分が支払い続けてきた住宅ローンを引き継いでもらえるのは非常にありがたいことです。

その一方で、買主からすると住宅ローンを引き継ぐことの利点はどこにあるのでしょうか。

実際のところ、金利が低い時期、厳密には売主が住宅ローンを組んだ時期の金利よりも現在の金利が安い場合、買主にとっては高い金利の住宅ローンを引き継ぐことになりますので、そこに旨味はありません。

2007年夏以降に表面化したサブプライム問題以降、アメリカの住宅価格はぐんぐん下がり、FEDはその緊急対策として実質ゼロ金利まで発動させました。

現在は当時の金利水準に戻りつつありますが、2007年以降の時期に組まれた住宅ローン(ゼロ金利に近いローン)の場合は明らかに今の金利の方が高いはずですので、過去約10年の間に組まれたローンであれば大概はローンを引き継いだ方が得することになります。

反対に、2000年~2007年までの米国住宅バブル絶頂期に組まれた住宅ローンの場合は今の金利よりも高いはずですから、このあたりの時期に組まれた住宅ローンを引き継ぐことにはさほど旨味はないはずです。

とはいえ、その金利差を差し引いたとしても、過去の高い金利の住宅ローンを引き継いだ方がよい場合もあります。

それは下記の2つの理由によります。

ローン組み手数料が不要

貸付、とりわけ住宅ローンの開始時に請求される手数料のことをOrigination Fee(オリジネーション・フィー)といいます。

いずれのローンも組む際にはこのオリジネーション・フィーが課せられ、通常は数千ドルもとられてしまいますが、住宅ローンを引き継ぐ場合はこの費用がかからないことになります。

またローン組みに関連する税金もかからないのです。

頭金が必要ない

当然ながら現行のローンを引き継ぐわけですので、頭金を支払う必要はありません。

金額的にはこの点が住宅ローンを引き継ぐ際の最も大きな利点とも言えます。

これら2つの理由により、住宅ローンを引き継ぐ場合の方がクロージングコストが安くて済むのです。

結果として、きちんと計算すれば過去の高い金利を踏襲してもまだ全体的に安く収まる場合があります。

住宅ローン引き継ぐぎに対する不利な点と危険性

このように住宅ローンを引き継ぐことによる利点も大きいものですが、それと同時にマイナス点もあることを理解しておかなくてはなりません。

住宅ローンの引継ぎにあたり前もって知っておきたい注意点は、下記の2点です。

Equity(エクイティ)分を支払う必要がある

Equityは日本語で「公平,公正」だの「衡平法」だのと訳されていますが、この漢字だけでは何のことかよく分かりません。

経理用語的には「含み資産」と訳した方が適切です。

例えば、

● 資産価値が$250,000の物件を$200,000で購入することができた

● 資産価値が$250,000の物件をそのまま$250,000で購入し、その5年後に物件価値が$300,000になった

この2つの場合、「Equity(エクイティ):含み資産」はどちらも$50,000となります。

そこで、例えば住宅ローンの引継ぎの場合には元々ローンを組んだ売主が物件を購入した際に$250,000だった物件が、売却時には資産価値から判断して$300,000の売却価格に落ち着いたとします。

そうすると、売主が物件所有期間に獲得した「Equity(エクイティ):含み資産」は$50,000となりますから、住宅ローンを引き継ぐ為にはこの$500,000は現金で支払う必要があるのです。

ある意味、頭金を支払う代わりに、この「Equity(エクイティ):含み資産」分を支払うことになりますね。

それでも、物件価格$300,000に対して頭金20%($60,000)程度入れて新たに住宅ローンを組むよりは、ローンを引き継いだ方がよい計算になります。

仮にこの「Equity(エクイティ):含み資産」分を支払えない場合はセカンドローンを組むことも出来ますが、このセカンドローンは今の金利かつ通常のクロージングコストがかかってしまいますので、総額ではローンを引き継ぐことに魅力がなくなってしまいます。

最初にローンを組んだ者に責任は残る

もう一つのリスクは、住宅ローンは引き継げたとしても最初にローンを組んだ元家主のローンに対する責任は残るということです。

契約上、住宅ローンを引き継げたとしても返済に対する責任は元家主(ローンを組んだ本人)に残りますから、仮に物件購入者が新しい物件所有者となりその後の住宅ローン返済が滞る場合、元家主の方にも責任が求められるのです。

ある意味、元家主が自分がつくった借金の保証人になるようなものです。

唯一、元家主がこのリスクを回避するためには

「あなた(元家主)のローンは現在の物件所有者に引き継がれており、あなたには現在の所有者が債務不履行となった場合の責任はありません。」

等の明文化した承認レターを発行してもらうしかありません。

ただし融資元から免責を認められる為には、その新しい債務者(物件購入者)が十分に返済能力があることが証明される必要があります。

まとめ

2日間にわたり、物件売却時の住宅ローンの引き継ぎに関してお伝えさせて頂きました。

日本人であっても永住権保持者であれば

FHAローン

USDAローン(こちらは農牧地に在住の方のみ)

に関しては有資格となりますので、物件を購入する際にはこれら政府主導の住宅ローンプログラムを優先的に検討するとよいと思います。

頭金に関して有利になるのみならず、出口戦略として物件売却時に住宅ローンを引き継いでもらえる可能性も加味すると、いよいよこれらの住宅ローンプログラムを活用しない手はないと思うのです。

これらのプログラムを使うことで現金の支出を抑え、その分の現金を不動産投資に回して自宅のローン支払いを楽にする方法も考えらえますから、アメリカで住宅購入を検討されている方は、この2つのローンのいずれかの活用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。



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